――瞼の裏に浮かぶ、僕の知る彼女。
紅に染まった頬。優しげな瞳。
その口許は笑みを浮かべていた。
――目の前に立つ、僕の知らない彼女。
血で紅に染まった頬。優しげな瞳。
その口許は笑みに歪んでいた。
知らない。私は知らない。私は何もしていない。
私はただ、あの場にいただけだ。
私はただ、彼と話をしていただけだ。
――手を、血に染めて?
私は何をしていたのだろうか。
あの時……幼馴染が倒れる瞬間。
転がっていたナイフ。
眩む視界。
染まる世界。
滲む朱。
声。
光。
闇。
私?
私が全ての始まり?
この惨劇の主演?
ワタシが現れる。
私が抑えていたワタシが。
わタシが……
いつも見ていた光景へと。
いつも見ている風景から。
波の音、ささやかな光、足と床と壁と天井と腕と。
痛みと痛みと嘆きと痛みと憤りと。
怒りと悲しみと望みと夢と。
耐える耐える耐え切れぬ苦しみと。
知らない。ワタシは知らない。ワタシは何もしていない。
ワタシはただ、あの場にいただけだ。
ワタシはただ、彼を殺していただけだ。
――愉悦に、浸りながら。
――トカゲは身の危険に瀕すると自らの尾を自切する。
そして動く尾に相手が気を取られている隙に身を隠すのだという。
これは言わば自衛のための行動・構造である。
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○呟き。
怖っ。
下手に語るより含みがあって怖いなぁ。こういうのもアリか。
……夏に書きたかったな!
小説というよりは詩に近い趣かも。
「トカゲのしっぽ→切り落とす→その理由:自衛」
までは良かったのだろうと思います。
「自衛手段→記憶を切り落とす・別人格」
……自分はもう末期じゃないかと思った瞬間でした。
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