僕は喰われるのだろうか?
 誰かに訊きたい。全力で訊きたい。問い詰めたい。
――トカゲは身の危険に瀕すると自らの尾を自切する。
  そして動く尾に相手が気を取られている隙に身を隠すのだという。
  これは言わば自衛のための行動・構造である。
 そんな事は僕も知っている。
 しかもその尾は切り離した後に再生する。
 トカゲは肉食のくせにそんな逃げ腰な構造を持っている。
 僕は逃げる事を前提とするのはどうかと思う。
 自然の摂理とはいえもっと雄雄しい方向に進化できなかったものか。
 爪が鋭かったり火を噴いたり目が合った者を石にしたり色々あるだろう。
 せめて最初から尾が無ければその分幾分素早く動けないだろうか。
 まぁ僕にとってそんな進化どうこうの話はどうでもいい。
 自分で始めた、誰への言葉かもわからない話ではあるが。
 なぜなら僕がその尻尾だからだ。

 教えて欲しい。切り離された尾は喰われるのか?
 こうして必死に動き天敵の気を惹くのは良いが、僕は喰われるのか?
 摂理か?これも自然の摂理なのか?
 自然の摂理では僕は喰われるのか?
 誰か全力で教えて欲しい。
 僕はこの先どうなるのだ。
 金色の瞳が細まり、爪をちらつかせ牙を剥く。
 イエネコの分際で僕を食すのか?
 ……食すのならば早く食せ。いややっぱり食すな。
 しかし、だ。所詮イエネコとはいえ侮れない。
 あれは人間に擦り寄って甘える畜生の目では無い。
 獲物の姿を捉え今か今かと時を待つ狩人の目だ。
 これがいわゆる猫被りか。
 侮る事ができるはずも無い。僕は尾だ。
 もう一度確認しよう。僕は尾だ。
 再三確認するが僕は尾だ。
 まあ待て。落ち着いて話し合おう。その爪さっきから痛い。
 くそっ……トカゲめ。次に遭ったらくびり殺してやる。
 だがその前に……僕は喰われるのか否か?
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○呟く。
不思議だ。自分の精神構造とかその他諸々が実に不思議だ。
でも最初に浮かんだ怖めなトカゲのしっぽよりは良い気がしている。
今回の、ある種不思議なトカゲのしっぽの方が。
さつばつほのぼのとしてて。
あっちは恐怖残虐系な成分しかなかったし……
他に浮かんだしっぽは壮大だったりして適してませんでした。
このトカゲ、別にニンジンやピーマンが嫌いだったりはしません。
読み返して疑わしくなったけど別にプリンが好きでもありません。
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