この辺わりとテキトーに載せてます!ぶっちゃけ!

その三。
「いけないことでしょうか」
不変を願うのはいけないことでしょうか 例えそれが満ち足りた時間であっても それは停止で、万死と同じでしょうか 原理に逆らう夢だとしても 赦されざる想いであったとしても そんな夢想を抱かずに、どうしてこの世が生きられましょう 夢想は追想 時を経る間に忘れた憧憬 餓えた幽鬼の、幼き様相 永久を望むことはいけないことでしょうか 喩えそれが平和や友愛であっても それは詭弁で、夢幻と同じでしょうか 夜に孕んだ御伽を語る幻を 朝に逝った夜伽を騙る空想を 溺れる程に求めずして、なぜこの世を生きられましょう 幻想は理想 星の空にもよく似た光景 暴け柩を、手向けた華を
「痛い視線」
瞳が見上げていた 朝露のせいか黒く濡れた瞳が 白い毛並みのそれは 疑問符を浮かべるように ただ何も知らない瞳 それは箱の中にいた それを囲む壁は思いのほか高く きっと身動きが取れない 何かに呆れた 同時にひどく腹が立った それは何も語らないからこそ 瞳が連れて行けと言っているようで たったそれだけの事に憤慨する 自分はお前なんか知らない 視線から身をかばうように その場を去った
「痛い記憶」
きっと本当は飼いたかった 嫌いどころか動物は好きだった しかし飼えなかった 死ぬのが怖かったから飼えなかった 小さな頃の記憶 それだけに大きく刺さった記憶 かけがえのないと感じていたのに 死んでしまったそれはひどく歪に感じられたから あれだけ舌がくすぐったかったのに もう温もりさえも感じられなかったから 深く愛したがために 半身を裂かれるように痛く より身近に感じるほどに 今際の別れは辛いと知っていたから 本当は飼いたかった しかし飼えなかった
「痛い後悔」
月が昇り陽が昇り 気になってもう一度それを見に行く 箱の中は赤 なぜ毛並みも赤 心無き人間はいるものだ 鋭利な痛みが見て取れた 微弱だが脈動を感じる まだこの世界にいる 服が赤く染まる事など気にも留めず 赤いそれを抱えて走った 熱いような冷たいような 雨粒めいたものが頬を伝う 意固地になっていたのかもしれない 自分が傷つくのが嫌だったから 最期まで愛した末の痛みなら構わないから どうか今はこの温もりを助けて欲しい
「七月の雨」
とうとう雨が降り出した やがて雷鳴が轟いた 雷鳴ではなく暴風だろうか どちらであったにせよ凄まじい叫びだ 聞くものを畏縮させる咆哮 何をそんなに叫ぶことがあるのだろう 大粒の涙を幾つも流して そう思うと 叫びは嗚咽だった ああ どうして気付いてくれないのだろう こんなにも空虚だというのに これはきっと そんな彼らの悲しみ 怒りさえも混じった悲しみなのだ 何も無い事は悲しい事だ いっそ悲しい事だとすら判らないほど 何も無ければ良いのに 悲しい事だと判ってしまう事が 本当に悲しかった どこから湧いたかも判らない悲しみ 悲しみを抱いてしまったという怒り 可哀想 切に そう思ってしまった だから私はゆっくりと声をかける もっと泣けば良い もっと叫べば良い いずれは涙も声も涸れるだろうと 湧き出る悲しみも涸れてしまうだろうと その時まで 私はただ 涙を浴びよう 叫びに耳を傾けよう そう思って じっと見守っていた 雷混じりの、七月の雨
「新月の夜」
いつの間にか見えなくなっていた 手元には灯りと呼べるものが無かった 視界奪われる新月の夜 以前よりも不自由になった視覚 頼るものが見えなくて ただ 泣きそうだった しかし 同情は出来ない なぜなら 目を瞑っていたからだ それは目も向けられぬ恐怖のためか それとももっともらしい畏縮のためか いつの間にか 見なくなっていた 目も開かずに見える現実とは何か 脇目も振らぬ逃避 目蓋に映った虚像 自分自身さえもが虚ろな、新月の夜 塗りつぶされた不明瞭な世界 確かなものが何一つ無くて そのまま押し潰されてしまいそうで 待ち遠しいのは、黎明だった
その二。
「三つの小詩・天」
いつまでも残像に見惚れている余裕はない 世界は一瞥する間に六十の生死を繰り返す それは六十の無二の刹那 留まる事なく移ろい続ける水のように 流れは時に易しく 時に酷い 往く流れは順流か それとも逆流か あるいは従うべき流れか 逆らうべき流れか 己が信念の元 選択し続けよ
「三つの小詩・地」
深緑の森の中 道は幾重にも分かたれていく そもそも道など存在しないのかもしれない しかし歩いてきた軌跡や 歩いてゆく軌跡を道と呼ぶのなら 道は重なり交じり合いながらも 無数に存在し 広がり続けてゆくのだろう 進むべき道とは 一体何なのだろうか 己が信念の元 選択し続けよ
「三つの小詩・人」
時を生き 道を行けば いずれ 応じた時空にて 応じたものに出会うだろう そしてそれは新たに子を生み物語を生む 根に支えられ枝葉を無数に伸ばす樹 実ったn乗の果実は同様に歴史を描き続ける 望む結果を引き寄せ導くべく 己が信念の元 選択し続けよ
その一。
「その瞳」
その瞳へと映るもの その瞳には映らないもの 正しきを見て、過ちを蔑み 過ちを見て、正しきを称え 光を見据え、闇を見ず 闇見据えれば、光見ず 比翼の鳥、連理の枝を 表裏一体の理を なぜ一方しか見据えない? その瞳へと映るもの その瞳には映らないもの 正しきとは何か? 過ちとは何か? 光とは何か? 闇とは何か? 全てを見据えよ 自ら考えよ その瞳はなぜ見え、何を見得るのか
「君の世界」
君は、これから始まる 始まって、終わりへと向かって往く それは仕方の無い事なんだ 生きる事は死ぬ事 いずれ死ぬという事が生きる事なのだから けれど、目的ではない 終わるために始まるわけではない 死ぬために生きるわけではない そんな事が全てなはずはない 目的という価値を創り上げるのは、君だ だからこそ君は、目覚めなければならない 目覚めて、世界を見据えなければならない それはもしかしたら困難かもしれない 理不尽な事が君を襲うかもしれない それでも君は、その二つの目で全てを見なければならない さぁ目覚めよう、君の世界はもうすぐだ 恐れずに瞼を開こう 瞳に映るものを愛そう 全てを享けいれて心に刻もう 君は、君でいなければならないのだから
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